家族の歴史が1冊の本になる──。想像すると、とても素敵ですよね。今回は家族史や家系図の作成サービスや親孝行に関する事業を展開する、株式会社青い鳥代表の中村昌史さんに事業を立ち上げたきっかけや親孝行への想いを聞きました。

編集部(以下、略) 株式会社青い鳥の主力事業、「親孝行のためのサービス」について具体的に教えてください。
中村昌史さん(以下、中村)弊社は親孝行をプロデュースする会社として、親孝行に特化した様々なサービスを提供しています。主事業は家族史や家系図を制作する「ファミリーヒストリー」事業。日本の伝統工芸「本金蒔絵」を使用した家紋制作の代行も行っており、家族の歴史を後世につなぐためのサポートをしています。他にも、親孝行のプランニング、ワークショップ、企業向けコンサルティング、自治体と連携した親孝行セミナーなどに取り組んでいます。

日本の伝統工芸「本金蒔絵」と木工工芸品の「樺細工」を使用した家紋の額縁
── 「ファミリーヒストリー」事業の家族史、家系図作成とはどのようなサービスなのですか?
中村)家族史は家族の過去から現在までの歴史、未来の展望を写真入りで1冊の本にします。制作は、依頼いただいたお客様のご両親にインタビューを行い、幼少期から成人するまでのエピソードや仕事、家族、子どもへの想いをお聞きします。場合によってはきょうだい、親戚にもお話を伺うことも。家族史を通じて、知っているようで知らない家族の歴史や伝えたい想いをご両親に伝えられますし、家族史を共有することで、家族の絆がより深まる1冊になると思います。

家族史をご依頼いただいたお客様
家系図作成では、依頼者の戸籍調査から始め、先祖の氏名や生没年、職業や母系の出身地なども明らかになります。例えば、今、30~40代の方は4~5代前まで、約150年前の先祖までさかのぼれます。ただ、戦時中の空襲や火災事故などで戸籍が焼失している場合は、この限りではありません。また、行政書士をはじめとした専門家の監修、トリプルチェックなど、確認体制がしっかりしているので安心して任せていただけます。

── 世界でたった一つの「家族の本」素敵ですね。核家族化している今では、家系図を持っている家庭も少なさそうです。どんな方がオーダーされるのでしょうか?
中村)親孝行をしたいと思っている人ですね。これまで、旅行やプレゼントなどで親に感謝を伝えてきたけれども、「感謝の気持ちがご先祖まで広がり、より深く知りたくなった」「自分の子どもや孫など、次世代に家族の歴史を伝えたい」という人が多いです。過去のお客様は、40~60代の男性経営者が最も多いです。故人との思い出をいつでも見返したいから、と依頼される方もいますね。
── 他にはどんな目的で制作される方が多いですか?
中村)結婚式でのプレゼントです。新郎新婦の生い立ちから二人の馴れ初め、新郎の両親、新郎の両親の想いを1冊の本にして、披露宴で両親と義両親に花束贈呈の場面で渡す方もいらっしゃいます。制作には、弊社のスタッフが同席して新郎が新婦のご両親に、新婦は新郎のご両親にインタビューを実施。インタビューを通じてお互いの人柄や子ども時代のエピソードなどを知り、より関係性が深まるといった付加価値もありますね。

結婚式当日のプレゼントや結婚1周年、2周年記念として、他には、還暦、古希、喜寿、傘寿などの節目、父の日、母の日、誕生日などのプレゼントとしてオーダーされる方も多いです。
── これまでに家族史や家系図を作った顧客から届いた声を教えてください。
中村)「家宝になった」とよく言ってもらえますね。そのたびに、「私たちは家宝をつくるサービスを提供している」と実感し、自信につながります。
── 中村さんが、親孝行をテーマに起業するきっかけになった出来事があれば教えてください。
中村)私の場合は中高生の頃、反抗期がひどかったんです。今振り返ると、自分でも驚くぐらい親にきつい態度を取っていました。高校卒業後、大学進学のため上京し、初めて一人暮らしをしたとき、ようやく親のありがたみを実感したんです。それからは親に感謝を持って接するようになりました。帰省したとき、母と会話していると、すごくうれしそうだったのが印象的で。「親孝行しよう」と思ったのがこの頃ですね。
── 起業を決めたのは大学在学中の20歳のときと聞いています。既に親孝行に関する事業をすると決めていたのですか?
中村)仕事は一生かけて取り組むべきものだと考えていたので、自分にしかできないこと、そして親がよろこぶような事業をやりたいと思っていました。そのとき、パッと浮かんだのが、親孝行に関する事業でした。その後、起業スクールに通い、様々な人と出会う中で「その事業はやめておけ」と反対されることが多かったのですが、反骨精神が高まって、「絶対にやる!」と意思が固まりました。
── 大学卒業後、カナダ、米国に長期滞在し、現地でのアルバイトなどで視野を広げ、帰国。いったん就職して、3年後に親孝行事業で起業しました。
中村)最初は順風満帆とは言えませんでした。親孝行メディアを立ち上げたのですが、ウェブサービスとして確立できず、数カ月でクローズ。この反省を活かし、家族や友人の親にインタビューを重ね、親から子、子から親へのリアルな想いを聞いたんです。そのとき、親子の想いに心を打たれ、せっかくだからと本にまとめました。この本を周囲の人に見せると、「自分も本にしたい」と好評だったんです。
── そこからファミリーヒストリー事業が誕生したんですね。今では他にも、親孝行に関するサービスや取り組みが充実しています。
中村)そうですね。現在はファミリーヒストリー事業を軸に、「親孝行アカデミー」という勉強会の開催や、弊社で育成した親孝行プランナーによる親孝行プランニングなどを展開。法人向けには、親孝行事業のコンサルティング、社史の制作、親族企業の事業継承サポートなども行っています。自治体向けに、親について考える機会を作り、感謝する事の大切さを伝えるワークショップも実施しています。
── 近年では、空き家問題など社会課題の解決にも取り組んでいるそうですね。
中村)近年の日本では、空き家問題が深刻化しています。私は住まいの未来を考えることも、親孝行の一つだと考えているため、家の所有者に特化した家系図を作成する「住まいについて考えるノート」を作りました。これは、「今後、自宅をどうしたいか」をノートに記し、親から子、または子から親に伝えるためのツールとして役立ててほしいと思います。この取り組みは、現在、地元・福岡県の宗像市と連携して進めており、ノートは同市のホームページからダウンロードできます。
── 親孝行も考え方を広げると、親への感謝だけではなく、家族の在り方、未来を考えることにもつながりますね。
中村)親孝行は家族のコミュニケーションの活性化と、より絆を深めるためにも大切なことです。家族で集まって語り合い、故人や先祖に想いを馳せる。そして、親子の愛情、想いを伝え合うことで、未来に向けた前向きな話ができるようになると思います。
── 今後はどんなサービスを考えていますか?
中村)今、新サービスとしてお客様のご先祖たちの誕生日を記した「ご先祖様カレンダー」を開発中です。例えば、祖父母、曾祖父母の誕生日が分かれば、先祖に手を合わせ、感謝する機会が増える。また、お墓参りがより大切な行事になるはずです。家族史や家系図を制作したお客様のご先祖に関するデータを持つ当社だからこそ提案できるサービスだと思います。
── 中村さん自身は親孝行についてどんな想いがありますか?
中村)20歳の頃、「親孝行=何かをプレゼントすること」だと思っていました。でも、年を重ねるにつれ、親孝行の価値観が変化し、今は親や先祖に意識を向けること、その気持ちこそが親孝行だと思っています。私のように反抗期があったとしても、「自分を生んでくれてありがとう」と心から思えるようになったときが、親孝行の始まり。親孝行とは、親について考え、行動することです。でも、正解はありません。だからこそ、当社のサービスを通じて、それぞれの想いを叶える親孝行をサポートしたいと思います。

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