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今できる親孝行2024.05.15親の本音に耳を傾ける。親世代が語る「嬉しかった親孝行」エピソード

親孝行と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。豪華な贈り物や、遠出の旅行、記念日のサプライズパーティーなどを想像する方もいるかもしれません。お金をかければいいのか、時間をかければいいのか……。しかし、親が本当に喜ぶ親孝行の形は、実はもっと身近なところにあるのかもしれません。

今回、4名の親世代に集まっていただき、親孝行について語り合っていただきました。参加者の皆さんは、それぞれ異なる家族構成や状況の中で子育てを経験してこられ、お孫さんのいる方もいらっしゃいます。座談会では、子供から受けた嬉しかった親孝行だけではなく、ご自身がおこなった親孝行のエピソードも交えながら、親孝行の本当の意味について考えていきました。親が喜ぶ親孝行の形とは。親の本音に耳を傾けることでヒントが見えてきました。

<ご参加の皆様>
Mさん(女性):子供3人(息子40歳既婚、息子36歳既婚、娘31歳既婚)
Tさん(女性):子供2人(息子35歳既婚、娘31歳既婚)、孫3人
Nさん(男性):子供1人(娘33歳未婚・同居)
Oさん(男性):子供2人(娘41歳既婚、娘35歳既婚)、孫4人

※ご参加者の情報は個人の特定を防ぐため一部変更しております。

親が喜ぶ意外な親孝行
〜非日常的なサプライズよりも日常の瞬間に潜んでいる〜

Mさんは、息子との何気ない出来事が嬉しいと微笑みました。「休日に草サッカーを楽しんでいる息子から連絡があり『実家の近くで試合があるからお昼に寄る』とのこと。その日の午前中に外で用事があったのですが、急いで済ませて帰りました。家で一緒にお昼ご飯を食べただけですが、それだけでも嬉しいものです」と語ってくれました。

Oさんは、娘からの何気ない一言をずっと覚えています。「娘が幼い頃に職場に来たのですが、仕事が忙しく何もかまってやれませんでした。それでも仕事をしている私を見て『お父さんかっこいい』と言ってくれたんです。とても嬉しかったですね」と、当時を振り返りました。

またT さんは、息子の思いやりのある行動を思い出し、楽しそうに話してくれました。「東日本大震災の時、息子が真っ先に二世帯住宅の下に住む祖父母の安否を確認しに行ってくれました。私は揺れに慌ててしまい、倒れそうな食器棚にしか気がいかなかったのですが、家族全員のことを冷静に守ってくれた息子を頼もしく感じましたね」。

親世代が、親への親孝行で感じたこと
〜親の後悔、失敗から学ぶ〜

Nさんは、父親との思い出を語りながら、こう言いました。「父は食べることがとても好きな人でした。よく一緒に食べに行っていました。でもね、それでも、亡くなる直前に食べたくても食べることができずに痩せ細っていく姿を見ていたら、もっと連れて行ってあげれば良かったと後悔しましたね。親孝行はやってもやっても尽きないものですね」。

Mさんは、親心の深さを振り返りました。「夫の話を義母にすると喜ばれていました。『息子のことを話せば義母は喜ぶ』、『親を喜ばせるのは簡単だな』と、当時は短絡的に考えていました。でも実は、義母は私達の夫婦仲が良いことに喜んでいたそうで……。後になって親心の深さを知って、自分が恥ずかしくなりました」と、申し訳なそうに当時のエピソードを語りました。

Oさんからは、親孝行の難しさを実感したエピソードを聞くことができました。「親に洋服をプレゼントしたことがあります。でも、親には趣味やこだわりがあるから、せっかく贈った洋服も着てもらえなかった。プレゼントを選ぶ難しさを痛感しましたね」。このエピソードには参加者全員が共感していました。ちなみに、親としてプレゼントをもらう立場からしても、趣味やこだわりに関連するプレゼントは遠慮したいとの声が多く出ました。

親世代が思う、子供にしてほしい親孝行
〜前提は、何もしなくても良い〜

Tさんは、子供への願いを込めてこう語ります。「親孝行はしなくてもいいんですよ。子供には、自分の家族を大切にしてほしい。親のことは二の次、三の次でいいから、まずは自分の家族との時間を大切にしてほしいですね」。親孝行よりも、子供の幸せを何よりも願う親の思いが伝わってきます。他の参加者も口を揃えて同じ想いを語ります。そこで「あえて挙げるとしたら」と問いかけてみると……。

Nさんは、妻と娘が仲良くしている様子を見ることができれば、それが親孝行だと言います。「娘が転職することになり、時間ができたからと海外旅行に誘ってきました。私は用事があったので行けませんでしたが、自分が旅行に行くことよりも、妻と二人で楽しそうにしている様子を見て、それだけで嬉しくなりました」と語ってくれました。家族の絆を感じることができるだけで親孝行を感じるそうです。

これを聞いてOさんは「両親のために建てた二世帯住宅。親がいなくなり片方が空いているので、娘夫婦が入ってくれると嬉しいですが」と思いを口にしました。すると、Nさんが、「うちも二世帯住宅を建てましたが、親が喜んでいたな」と、当時を懐かしそうに振り返りました。Nさんのご両親は、上の階からお孫さんがバタバタしている音を聞くだけで喜んでいたそうです。

親孝行のはじめ方
〜親世代からのアドバイス〜

ここまで、4名の話を聞いていると、親孝行に大事なことは、けっして特別なことだけではなく、日常の中で家族の絆を感じることなのかなと思うようになってきました。では、実際にどんなことから始めれば良いのでしょうか。4名の方からアドバイスをいただきました。

Tさんは、「うちの夫は18歳の頃に家を出てから一切親孝行らしいことはしていませんでした。そんな夫でしたが、夫の母が入院したのを機に動画を送ることを始めました。母も歳ですが、LINEで動画を観ることはできます。毎日送っているのですが、とても喜んでいますよ」と語ってくれました。動画の内容は自分や孫の日常を数十秒切り取っただけの、本当に些細な内容だと教えてくれました。

Mさんは、「まずは小さな親孝行から」と提案してくれました。「親の好きな食べ物を持って行くだけでも喜ばれますよ。一緒に買い物に行くのもおすすめです」。食べ物や買い物など、何かと理由をつけて一緒に過ごす時間を設けることから入ると、始めやすいとのとこです。

Oさんからは「親の趣味や好みを知り、それを尊重することが親孝行につながりやすいかもしれない。親の立場に立って考えてみることが大事ですね」とのアドバイスがありました。Oさんは趣味のゴルフを実の娘だけでなく「娘の婿さんになる人とも楽しめたら嬉しいんだよね」と、未だ見ぬ先の親孝行に思いを馳せていました。これにはNさんも同意。

Nさんからは「何から親孝行はじめたらよいのか迷う気持ちはよくわかります」と前置きしたうえで、「でも、LINEなどで日頃からコミュニケーションをとっていれば、何をして欲しいのかわかると思いますよ。私も、娘とは直接話さないですが、LINEで何が欲しいのかは素直に伝えますから」と、まずは日頃のコミュニケーションを頻繁に行うことを勧めてもらいました。

親孝行に正解はありませんが、今回の座談会でわかったことは「特別なサプライズだけではなく、日常の中でできる小さなことを数多く積み重ねていくのも親孝行」ということです。そして何よりも親が望む親孝行を見つけるためには、日々の何気ない会話から親の希望を汲みとったり、一緒に過ごす時間を多く設けたりすることが、とても大切なことだとわかりました。今回の座談会が、あなたにとっての「自分らしい親孝行」実現に向けて、ひとつのヒントになれば幸いです。

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