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その先の親孝行2026.06.09想いを風にのせて――風車と音楽が届けた、小さな供養のかたち

新緑の丘の上に広がる色とりどりの風車。風が通るたびに一斉にくるくると回り、羽根に書かれた文字や絵がちらちらと陽の光を弾いています。

2026年5月10日(日)、大阪府羽曳野市の高台に広がるはびきの中央霊園で「風車供養・祈願祭」が開催されました。故人への想いを風車に記し、風に乗せて届ける催しです。当日は風車の奉納に加え、霊園に眠る方々に向けて音楽を届ける献奏(けんそう)と読経も行われ、5月の爽やかな風の中、静かで温かな一日となりました。

その様子を、風車作りから奉納までの体験とともにお届けいたします。

風車に、想いをのせる

風車供養・祈願祭の受付は、霊園の管理棟事務所で行われています。1月から開催日まで随時受け付けており、風車は1本50円。料金箱に寄付金を入れ、棚に並んだ赤、青、黄、緑、オレンジなど、さまざまな色の台紙の中から好きな色を一枚選びます。

選んだ台紙とペンを手に、屋外のテーブルに向かいました。風車の羽根になる部分に、大切な故人への想いや祈りを書き込む時間です。何を書こうかと少し迷い、ペンが止まる瞬間がありました。普段は言葉にする機会のない気持ちを、あらためて文字にしようとすると、さまざまな記憶が静かに蘇ってきます。

書き上げた台紙を折り、風車の形に組み立てていきます。自分の手で想いを形にしていく。その過程そのものが供養の時間になっていると感じました。

完成した風車を持って、霊園内の風車飾りエリアへ。芝生の上に並ぶ何百本もの風車の中に、自分の風車をそっと挿しました。風車飾りの期間は5月1日から5月末まで。1ヶ月の間、それぞれの想いを乗せた風車が、風を受けて回り続けます。

くるくると回る風車。それぞれの想いのかたち

風車に書かれたメッセージの内容は、実にさまざまでした。

くるくると回る風車の羽根の合間から、「見守っていてね」という言葉がふと目に留まりました。ほかにも、お経の一節を丁寧に記された風車もあります。一枚一枚の羽根に込められた想いは、風に乗って回りながら、そのすべてを見せることなく静かに届けられていく。どの風車にも、書いた方が大切な故人と向き合った時間が刻まれているようでした。

中には、まだ文字を書くのが難しい年齢のお子さんでしょうか、おじいちゃんやおばあちゃんの似顔絵や、花や太陽のイラストがカラフルに描かれた風車もありました。絵を通じて想いを伝えようとしている。その一生懸命さが、風車の羽根から伝わってきました。

家族で1本の風車に寄せ書きをされている方もいらっしゃいました。風車を囲みながら、「何を書く?」「お父さんは何て書いたの?」。そんな会話が生まれ、普段は口にする機会の少ない大切な故人への想いを、家族の間で初めて共有する。風車がそのきっかけを作っていました。

会場で来園者の方にお話を伺う中で、印象に残ったエピソードがあります。ある小さなお子さんが、前の週にお参りに来た際に風車を作り、お墓のそばに直接挿したのだそうです。おじいちゃんが眠るすぐ近くで回っていてほしい。きっとそんな気持ちだったのでしょう。翌週、それに気づいたお母さんと一緒にもう一度霊園を訪れ、今度は会場の風車エリアに挿し直していました。風車がきっかけとなり、2週にわたってお参りに来たことになります。おじいちゃんも喜んでくれたのではないでしょうか。

「想いを風に乗せて届ける」――風車供養が生まれるまで

なぜ、供養に「風車」なのか。そのアイデアの始まりは、スタッフが三重県の商業施設を訪れた際に目にした、たくさんの風車が並ぶ光景だったといいます。色とりどりの風車が風を受けて一斉に回る様子に心を動かされ、これを霊園でもできないかと考えました。

さらに、東京都港区にある増上寺のお地蔵さんたちにも無数の風車が供えられていることを知り、風車が供養の場にも馴染むものであると確信を深めたそうです。「想いを風に乗せて、故人のもとへ届ける」。風車の回転に、そんな意味を重ねたコンセプトが生まれました。

会場では風車のほかにも、「キャンドルすくい」や、小さなお子さん向けのスーパーボールすくいが用意されており、お墓参りに来た家族連れ和やかなひとときを過ごしていました。

献奏――風車の間に響いた、もうひとつの供養

この日、風車が並ぶ丘には、もうひとつの供養の形がありました。献奏です。はびきの中央霊園では、霊園に眠る方々に向けて読経と音楽を奉納する供養を独自に行っており、この形を献奏と呼んでいます。風車供養と合わせての開催は今回で2回目ですが、献奏そのものはこれまでに5回ほど実施されてきました。

当日は午前10時から献奏、11時30分から読経というスケジュール。今回の献奏を担ったのは、関西を中心にバンドとして音楽活動をしている2人組のミュージシャンでした。

午前中の献奏は、霊園に眠る方々や、風車に書かれたメッセージの宛先となっている故人に向けたもの。風車が静かに揺れる中、ギターの音色とパーカッションの響きが丘を包みました。演奏を重ねるうちにこの場所の空気に馴染んでいった2人は、当初の予定にはなかった午後の演奏も自ら申し出てくれました。お参りに来られた方々の顔ぶれを見ながら子供向け映画の楽曲をカバーし始めると、その瞬間に風がふっと吹き、風車が一斉に回り出したといいます。「もしかして、ご先祖様たちが喜んでくれているのかな」。そう話すミュージシャンの表情は穏やかで、風車に囲まれたこの場所でしか生まれない時間を、演奏する側もまた受け取っているようでした。

演奏を終えた感想を尋ねると、「こちらが満たされた」という意外な言葉が返ってきました。供養のために届けた音楽が、風車を通じて、あるいはお参りに来られた方々を通じて、何かあたたかなものとなって返ってきた。そんな感覚があったといいます。供養のために奏でた音楽が、演奏する側をも満たしていく。供養という行為が一方通行のものではないことを、あらためて感じさせてくれるエピソードでした。

想いを届ける場所として

風車1本につき50円の寄付金は、社会福祉法人 羽曳野市社会福祉協議会へ届けられます。大切な故人を想い、手を合わせるという行為が、巡り巡って地域の福祉を支える力にもなる。風車供養・祈願祭には、そんな重層的な意味合いも込められています。

この日、はびきの中央霊園には、風車に想いを書いて奉納する方、お墓参りの前後に風車の景色を楽しむ方、献奏の音色に耳を傾ける方、キャンドルすくいに夢中になるお子さんと見守るご家族、さまざまな方々の姿がありました。形は違えど、そこにあったのは「大切な人を想う気持ち」と「今ここにいる家族とのつながり」でした。

はびきの中央霊園がこうした催しを続けている背景には、お墓参りをもっと自然に、もっと温かな時間にしてほしいという想いがあるといいます。霊園という場所が、お墓を管理するだけの場所ではなく、大切な故人や家族との関係をつないでいく場所であること。この日の風車供養・祈願祭は、そのことを静かに伝えてくれていたように感じました。

風車に書いた言葉は、風に乗って故人のもとへ届いていく。献奏の音色もまた、風車の間を抜けて、同じように届いていたのかもしれません。大切な故人を想う気持ちを、自分の手で形にし、風に託すことができる場所。来年もまたこの場所を訪れ、風車の回る音に耳を澄ませたいと思います。

イベント概要

名称:2026年度『風車』供養・祈願祭 ~想いを風にのせて~
開催日:2026年5月10日(日)
会場:はびきの中央霊園
参加費:風車1本50円
主催:はびきの中央霊園
内容:風車への想いの記入・奉納、献奏、読経、キャンドルすくい、スーパーボールすくい
風車設置期間:5月1日~5月末
寄付金先:社会福祉法人 羽曳野市社会福祉協議会

取材/文/写真 戸田敏治

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