夏の名残と秋の訪れが交差する9月の宵、大阪府大東市の高台に佇む大阪霊園は普段なら人影もまばらな時間帯。夕陽が沈むのを静かに見守るだけの場所が、この日は特別な輝きを放っていました。9月14日土曜日から23日月曜日まで催された「大阪霊園キャンドルナイト」。敬老の日である16日には、霊園内の全てのお墓にロウソクが灯され、館内では法要が執り行われました。今年で2回目を迎えたこの催しは、幻想的なライトアップや厳かな追悼イベントを通じて、大切な故人との思い出の中に永遠の絆を感じることができる心温まる集いとなりました。
9月16日の午後4時を過ぎた頃です。お参りにくる方が次々と現れはじめました。お花を供える人々、お線香に火を点ける人々、そっと手を合わせている人々。大阪を覆うオレンジ色の夕焼けの中で、それぞれが大切な故人との再会を楽しんでいるようでした。
夕日が落ちはじめ、お墓の周りに置かれたロウソクやライトの灯火が目立つようになると霊園の雰囲気が変わってきます。「いつもは昼間にくる」と教えてくださった、東大阪市からお参りにこられた方は、「こんなに綺麗になるとは思わなかった」と、揺らぐ灯りに照らされた霊園の雰囲気に驚きを見せていました。大阪の街を一望しながらの夕景と、幻想的なライトアップの両方を楽しむことができ、この日に合わせてお参りできたことを小さなお子さんと一緒に喜んでおられました。
ゆっくりとネオンの光が輝き出す大阪の街の中に、大切な故人との思い出を見つけたのか、懐かしそうな眼差しで佇む姿も多くみることができました。大阪霊園は大阪市内を真西に見ることができるだけではなく、左手側は明石海峡大橋、右手側は六甲山と、関西を代表する名所に挟まれた広大な風景を一望することができます。大きな大阪の地には大切な故人との思い出やエピソードがどこかしこに眠っているはずです。それらを空から一緒に眺めるようにひとつひとつ掘り起こし、大切な故人と思い出話に花を咲かせていたのかもしれません。偲ぶだけではなく、確かに会話をしている。声が聞こえることはありませんが、不思議とそう感じることができました。
大阪霊園には3つのモニュメントが大阪市内を見下ろすように建てられていました。これらは9月10日に完成したばかりといいますので、初めて見る方も多かったと思われます。モニュメントは夕日が落ちる場所の目印になっており、上部に空いた窓の中から眺めることができます。
3つのうち真ん中のモニュメントは真西を向いているため、春と秋の彼岸の日に夕日が落ちる光景を眺めることができます。左側のモニュメントは六甲山を向いているため夏の盆に、右側のモニュメントは明石海峡大橋を向いているため正月にと、季節に応じて夕日が落ちる場所がわかるようデザインされているとのことでした。
この話を聞いて「次は正月にきてみようかな」。そう思ったのは私だけはないはずです。「正月に明石海峡大橋に落ちる夕日を眺めながら、次はどんな思い出話をしようか」。大切な故人との次の会話が楽しみになる、これまでのお墓参りでは味わったことのない新しい気持ちが湧いてくるのを感じました。
小一時間もするとお参りが落ち着いたのか、キッチンカーで販売しているフードやドリンクを片手に、夕景からゆっくりと夜景に変わっていく大阪の街を眺めたり、霊園を灯すロウソクやライトでのライトアップを楽しんだりする様子がうかがえました。この日は阪急百貨店の「走るデパ地下」による人気スイーツの移動販売も行われており、お墓参りに優しい彩りを添えていました。小さなお子様も楽しんでおり、和やかな雰囲気に包まれていました。
キャンドルナイトでは、ロウソクやライトでのライトアップに加え、「メッセージ灯籠」が用意されており、大切な故人へメッセージを贈れるようになっていました。これは大阪霊園にお参りに来た方ならどなたでも書くことができます。ライトアップの時期だけではなく8月からお預かりしているとのことで、120以上の「メッセージ灯籠」が集まり、スタッフの手でひとつひとつ丁寧に火が灯されていきました。
もちろん当日も書くことはできるため、既に灯された「メッセージ灯籠」を眺めながら、ペンを片手に想いを巡らせている方もいらっしゃいました。大切な故人への想いをあらために言葉にしようとすると、様々な思い出が蘇ってくるようです。大切な故人と静かに、でも豊かな会話を交わしているかのような、そんな穏やかな様子を皆さんから感じることができました。
「ばあばへ コンテストにでるから見にきてね がんばるから!大すき」「おじいちゃん おばあちゃんへ パパもそっちに行ってしまったけど、ママのことは任せてください。これからも見守っていてネ」
これら、灯籠に書かれたメッセージの数々。拝見していると、すぐ横にいる人に呼びかけているように感じます。住む世界が変わり、姿を直接見ることができなくなったとはいえ、強い絆は今もなお残り続けていることを物語っているようでした。また、故人と会ったことはないのに、生前の姿やメッセージの贈り主との楽しかった生活の様子などが不思議と浮かんできました。もしかしたら、知らず知らずのうちに、自分の大切な人との思い出を重ね合わせていたのかもしれません。見ず知らずの人にも、大切な故人との絆を感じさせるということは、単に「想いを言葉にして灯籠で灯す」ということだけではない、とても深い意味を私達に与えてくださっているのかもしれません。
夕陽が沈み暗闇が空を染め始める頃、霊園はさらに幻想的な雰囲気に包まれていきます。館内では法要が始まり30人ほどの方々が参列されていました。ご夫婦、家族連れ、小さなお子様の姿も目立ちます。世代を超えた参列者の様子に、家族の絆が時を超えて今も続いていることを感じ取ることができました。
法要の参列者にお話しをうかがったところ「皆さんと合同での法要が賑やかで良かったです」「別々の場所で暮らしている姉妹の家族と一緒に参加しました。それぞれ霊園にお墓を持っています。イベントをきっかけに会う機会が増えるのは嬉しいことです」といった声をいただくことができました。
大阪霊園の責任者・柾さんは、「ご家族にも地域の皆さまにも気軽にふらっと寄ってくださるような霊園になることを願っています」と語ります。「霊園でちょっとした時間を過ごしていただき『自分や家族が安心して眠れる場所だな』と感じていただければ嬉しいです」と秘める想いを教えてくださいました。今後も、このような催しを増やすとともに、「ペットとともに眠れる樹木葬」や「樹木葬専用エリア【追憶の庭】」の拡充など、皆さんに安心していただける霊園造りを目指して懸命に取り組んでいくとのことでした。
この「大阪霊園キャンドルナイト」は、大切な故人を偲ぶだけではなく、ご自身、ご家族、そして大切な故人へと向けた新しい会話が生まれる機会や、大切な故人との永遠に続く絆を再確認する機会にもなると感じました。参加者の皆さまお一人お一人から感想をうかがったわけではありませんが、お帰りの際には爽やかな微笑みを浮かべていらしたので、今後も大阪霊園は皆さまにとって大切な故人の追悼の場所であると同時に、安心できる霊園としても親しんでいただける場所になるのではないかと、あらためて感じることができました。来年もまたこの時期に、この場所を訪れたいと思います。
<大阪霊園概要>
・霊園名:大阪霊園 眺望の丘
・所在地:大阪府大東市龍間331
・経営主体:宗教法人勝福寺
・営業時間(通常):9:00~18:00(18時までに入場すれば見学可)
・定休日:毎週木曜日および年末年始(祝日および盆彼岸は木曜も営業)
・施設/設備:駐車場、管理事務所、休憩施設、エレベーター、永代供養塔、永代供養墓、樹木葬
文章:戸田敏治