大掃除やお正月の準備であわただしい年の瀬が、元旦になると街全体が静まり返り、清らかな気に包まれるのはいつも不思議なものだなと感じます。
初詣は、いつもどちらに行かれますか。家の近くの氏神様やご先祖様が祀られているお寺や神社にお参りをする方が多いと思いますが、今年はご両親を誘って少し遠出をしてみてはいかがでしょうか。
両親や大切な人たちの長寿健康を祈るのにおすすめの全国の神社を、令和7年に因んで7つピックアップしてみました。
隣接する輪王寺、日光二荒山神社を含めてユネスコ世界文化遺産として登録されている日光東照宮は、観光スポットとして大変人気の高い神社です。
「東照大権現」として祀られているのは、徳川家康です。260年にわたり戦争のない平和な江戸時代の基礎を築き、当時としては長寿と言える73歳でこの世を去りました。パワフルな家康の生涯を顧みて開運、健康長寿にご利益があるのはもちろんのこと、徳川家が威信をかけて創建しただけあって、建物が赤色や金箔を貼ってあるなど華美で他の神社やお寺とは違う存在感があります。
ご両親の世代でしたら修学旅行に行かれた方も多いのではないでしょうか。雄大な自然、荘厳な建造物に囲まれて、普段あまり聞けない子ども時代や青春時代の思い出話に花が咲くかもしれませんね。
人気スポットだけに混雑が予想されるため、体力のないお年寄りにはあえておすすめしませんが、まだまだお元気でしたらぜひ大晦日から行ってみてはいかがでしょうか。
元旦の0時から1時半に表門が開いてお参りができます。ライトアップされた陽明門は比類なき美しさで圧倒されます。また日光東照宮全体がパワースポットと言われていますが、中でも最強なのは奥宮周辺。ぜひ今年を乗り切るパワーをいただきましょう。三猿や眠り猫など有名な彫刻などを楽しむもよし。歴史好きならば徳川家康に想いを馳せるもよし。電車や車でのアクセスもスムーズな場所にあり、周辺にも美術館や景勝地も多いので、思い出に残る旅が楽しめそうです。
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・栃木県日光市山内2301
・https://www.toshogu.jp/
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東天神社は、住宅街の中にあるこぢんまりとした神社ながら拝殿の周囲には末社も多く祀られ、地域の氏神様として愛されています。とはいえ由来は古く、行基法師が昆陽大池や猪名野笹原を開拓時に、事業達成の祈願のために創建されたということです。ご祭神は万物の生みの親である伊弉諾尊(イザナギノミコト)、伊弉册尊(イザナミノミコト)で「息災延命長寿」の信仰を守っています。
境内を一周して手を合わせ、樹齢約500年の楠を見上げれば心穏やかな気持ちになれるでしょう。
近くに西天神社と天神社がありますので三社巡りをしても。三社の中で東天神社が最もおすすめの理由は、御朱印です。「健康守護神」と太くまっすぐに大書されておりとても頼もしく感じられます。御朱印帳にしまい込まずに、家族の目につくところに貼っておきたいですね。
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・ 兵庫県伊丹市昆陽4丁目1
・https://www.hyogo-jinjacho.com/data/6305003.html
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京都で最古の神社が松尾大社です。社殿建立は701年(飛鳥時代)ですが、それより以前からこの地方に住んでいた人々が、松尾山の山霊を祀って生活の守護としていたそうです。
本殿正面門の左右両側に亀と鯉が奉納されているので、ぜひ亀を撫でてあげてください。亀は不老長寿、鯉は出世開運の守護の象徴です。ご両親ともども亀の不老長寿にあやかりたいものですね。
また松尾大社は、この地に渡った渡来人秦氏が酒造りを特技としていたことから「日本第一酒造神」とも言われています。「お酒の資料館」があったり、酒樽柄の御朱印帳があったり、「樽うらない」というユニークな占いがあるなど、お酒好きなご両親でしたら何かと楽しい神社です。境内にズラリと積まれた酒樽も圧巻。お参りをするとお酒の御利益があるかもしれませんね。
亀の井という霊泉の水は酒造家にとっては酒の元水として大切にされてきましたが、「延命長寿」「蘇りの水」としても有名です。持ち帰って水割り用に使ってはいかが?
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・京都市西京区嵐山宮町3
・https://www.matsunoo.or.jp/
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全国に500社ある阿蘇神社の総本山である熊本の阿蘇神社は、神武天皇の孫である健磐龍命とその家族12柱の神様を祀る2300年以上の歴史を持つ古い神社です。
2016年の熊本地震の際には甚大な被害を受けましたが、2023年12月には重要文化財である主要社殿、楼門の修復を終えました。復旧を遂げ完成した建築物はとても頼もしく、心を支えてくれる存在です。
年を取ったご両親は、どんなに元気そうに見えても心の中には「失敗した」「昨日はできたことが今日できない」「明日はどうなるのだろう」といったマイナス感情を少なからずお持ちのもの。地震から力強く復興した阿蘇神社はそんなお父様、お母様にも力を与えてくれるのではないでしょうか。
高さ21mの大楼門の前にある「神の泉」からは不老長寿の御神水が湧き出ており、汲みに来る人が絶えません。
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・熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1
・https://asojinja.or.jp/
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ぴんぴんころりとは、元気で長生きしてころりと死にたいという願望をあらわした言葉で、長野県が発祥の地と言われています。
神社には「おおわらじ」が供えられ、参拝者がはだしで踏むと、無病息災、健康健脚などのご利益があります。まずは自らの足腰に感謝して足踏みをしましょう。横で仁王立ちになって見守ってくれる大きな道祖神はどことなくユーモラスです。
ぴんぴんころりの要は足腰の丈夫なこと。大わらじの上で足踏みをして、道祖神に健康健脚をお祈りしたら、はれやかな気持ちでご両親とともに散策をしてみてはいかがでしょう。
ぴんころ神社があるのは、駒ケ根高原。周辺は中央アルプスや南アルプスを望む絶景スポットでもあります。整備された遊歩道は、1時間のゆったりした散策コースと足に自信のある健脚コース、ご両親の体調に合わせて選択しましょう。毎年、健康チェックも兼ねて訪れたい神社ですね。
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・長野県駒ヶ根市赤穂4-160
・https://pinkorojinjya.com/
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東京から新幹線で40分。抜群のアクセスの良さと温暖な気候で昨今はブーム再来とも呼ばれている熱海。お正月でもあたたかな気候はお年寄りにとってはうれしいことですね。
国指定天然記念物に指定されている御神木「大楠」は何と樹齢2000年を超えており、まさに長寿のシンボルといった存在です。幹の周りは24m。その周りを1周すれば1年寿命が延びると言われ、健康長寿・心願成就の御利益があります。この御神木の生命力にぜひあやかりたいものです。
また、禁酒の神様としても知られているそうですので、そろそろ禁酒をしたいけれどもふんぎりがつかないという方の背中を優しく押してあげられるかもしれません。
神社内には4つの飲食店があり、中でも参集殿にあるカフェ「茶寮報鼓」はとてもおしゃれで若い人たちにも人気のスポットです。オリジナルアロマや来福スイーツなどお土産品も豊富。3世代でお参りに行っても子どもたちも喜んでくれることでしょう。
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・静岡県熱海市西山町43-1
・https://kinomiya.or.jp/
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しあわせのなでうさぎのお出迎えがうれしい出雲大神宮は、それほど広くはないので疲れない程度に回りやすく、自然の中のパワースポットとして人気があります。
有名な出雲大社とは違いますが、江戸時代の末までは「出雲大社」と言えばこちらの大神宮のことを指していたとか。出雲大神宮本殿の裏手にある御神体山から出るご神水は「真名井の水」と呼ばれ、延命長寿水として昔から飲み水のほか酒造りなどにも使われてきました。どんな病にも痛みにも効く霊水だそうです。ぜひ容器持参でたっぷりと持ち帰り、自宅で福茶などを淹れて一服したいものですね。
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・京都府亀岡市千歳町出雲無番地
・http://www.izumo-d.org/
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初詣はなるべくなら元日に。できれば三が日中に行きたいところですが、「混雑は避けたい」「年末年始は仕事が休めない」などの事情もあることと思います。スケジュールや体調に合わせて初詣はいつ行くのかご両親とも相談してみましょう。
帰省する場合は、日にちが確定していなくても「まだ予定ははっきりとは決まっていないけれど大体〇日ごろから〇日ごろまでいるつもり」と連絡を早めにしてあげましょう。ご両親は首を長くして待っていますよ。
日本全国の神社は8万8000もあるとか。世界中から観光客が集まる有名な神社から住宅地の中の小さな神社まで、実に個性豊かです。通いなれたお住まいや帰省先の神社やお寺の由来やご利益も、一度きちんと調べてみてはいかがでしょうか。意外な由来に驚いたり、長寿・病気治癒など、今のご自身やご両親のために必要なご利益を発見できるかもしれません。
健康に過ごせたことを感謝し、長寿を年神様に祈る初詣。今年も来年も、お父様お母様と共に健やかにお正月を迎えられますように。
(文 宗像陽子)