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今できる親孝行2026.03.09スマートフォンを使ったやさしいデジタル親孝行

親世代にもスマートフォンが広がった今、離れて暮らす親御さんとの距離を、ちょっとした工夫で縮められる時代になりました。なかなか会いに行けないもどかしさを感じている方にこそ知っていただきたい、”やさしいデジタル親孝行”のアイデアをご紹介します。

まずは「一緒に使ってみる」ところから

デジタル親孝行の第一歩は、何か特別なアプリを入れることではありません。「一緒に画面を見ながら触ってみる」。それだけで十分かと思います。

「スマホは難しくて…」と感じている親御さんも、お子さんやお孫さんが隣に座って「ここを押してみて」と声をかけてくれるだけで、安心感が生まれます。使い方をマスターすることだけがゴールではありません。もちろん覚えられたら素敵ですが、それ以上に大切なのは、その過程で生まれる親子の会話そのものです。「あら、変な画面になっちゃった」「大丈夫、こうすれば戻るよ」。何回でもやり直しながら、笑い合いながら、少しずつ前に進んでいく。そんなやさしい時間の中にこそ、デジタル親孝行のいちばんの喜びがあるのではないでしょうか。

「何を使うか」よりも、「一緒に手を動かした時間」が、デジタル親孝行のいちばんの贈りものになるかもしれません。

ひとつおすすめしたい工夫があります。使い方を簡単な紙のマニュアルにして渡しておくことです。きれいに作り込む必要はありません。画面のイラストをざっくり描いて、「ここを押す」「次にここ」と矢印で示すくらいで十分です。スマートフォンの横に置いておけるメモ程度のもので構いません。一緒に操作したときは覚えていても、いざ一人でやろうとすると「あれ、どこを押すんだっけ」と不安になることはよくあります。そんなとき、手元に紙が一枚あるだけで、親御さんは安心して自分のペースで操作できます。手書きのマニュアルは、ちょっとした手間ではありますが、その手間そのものが「あなたに使ってほしい」という気持ちの表れになるのではないでしょうか。

コミュニケーションを楽しむことが大前提。その上で、実際にどんなアプリを親子で楽しめるのでしょうか。ここからは、具体的なアイデアをいくつかご紹介していきます。

写真を「贈り合う」という小さな親孝行

日々の写真を家族で共有する。それだけのことが、離れて暮らす親御さんにとっては何より嬉しい便りになります。LINEで送り合うだけでも十分嬉しいものですが、保存期間や容量が気になることもあります。そんなときは、GoogleフォトやAmazon Photosなどの共有アルバムを試してみてはいかがでしょうか。共有リンクを送るだけで設定は完了。容量を気にせず、いつでも見返すことができます。

お孫さんの運動会の写真、庭に咲いた花の一枚、何気ない休日の食卓の風景。そうした写真が少しずつ増えていくたびに、親御さんはきっと何度も開いて眺めてくださるはずです。パソコンの大きな画面で見返したり、気に入った写真をプリントして飾ったりする楽しみも広がります。

昔の写真をスキャンしてアルバムに入れてみるのも素敵な使い方です。「この写真、誰?」とお孫さんが画面を指さすところから、「これはおじいちゃんが若い頃でね…」と昔話が始まる。デジタルの力を借りて、家族の記憶を次の世代へ手渡していく。写真の共有は、そんなかけがえのない会話の入り口にもなってくれるのではないでしょうか。

離れて暮らしていても、同じ写真を見ながらおしゃべりを楽しむ方法があります。電話をスピーカーモードにして、お互いに共有アルバムを開いてみてください。同じ画面を見ながら「この写真、覚えてる?」「これ、どこで撮ったんだっけ」と話すうちに、まるで隣にいるような感覚が生まれます。お孫さんが「おじいちゃん、おばあちゃん、この写真の赤ちゃん誰?」と尋ねれば、そこから思いがけない家族の物語が広がっていくかもしれません。ビデオ通話のような特別な操作は必要ありません。いつもの電話にひと工夫を加えるだけで、写真を囲んだ団らんの時間が生まれます。

歩数を「褒める」ことから始まる、健康の見守り

離れて暮らしていると、親御さんの健康はどうしても気になるもの。かといって毎回「体調どう?」と聞くのも、心配をかけてしまいそうで遠慮してしまう。そんなとき、スマートフォンの健康管理機能が、さりげない見守りの手助けをしてくれます。

お互いがiPhoneを使っているなら、標準の「ヘルスケア」アプリにある共有機能が便利です。帰省の際に一度設定しておけば、その後は特に操作をしなくても、お互いの活動量が自動で共有されます。また、歩行速度が極端に落ちるなど、健康状態に変化があった際も通知が届くため、もしものときの安心にもつながります。

「自分はiPhoneだけど、親はAndroid」という場合や、より詳しく活動量を知りたい場合は、FitbitやGarminなどのウェアラブル端末を活用してみましょう。スマホの機種を問わず、同じアプリを入れるだけで「家族グループ」を作ることができます。

「今週はお父さんの歩数に負けた!」なんて会話が生まれたら、それはもう立派な親孝行です。大切なのは、データを監視することではなく「会話のきっかけ」にすること。「今日はたくさん歩いたね、どこかにお出かけしたの?」「最近よく運動してるね、すごい!」。歩数という小さな数字を、温かい声かけのツールに変えてみてはいかがでしょうか。

思い出の曲を「一緒に聴く」という贈りもの

親御さんに「若い頃、どんな曲が好きだった?」と聞いてみたことはありますか。きっと、それだけで目を輝かせて話し始めてくださるのではないでしょうか。

かつてレコードやカセットテープでしか聴けなかった曲も、今は音楽配信サービスで手軽に楽しむことができます。親御さんのために「思い出のプレイリスト」を作ってみてはいかがでしょう。青春時代に流行した曲、家族でドライブしたときに車内で流れていた曲。その一曲一曲には、親御さんだけが知っている物語が詰まっています。

「この曲、おじいちゃん、おばあちゃんたちの時代に流行ってたんだよね?」とお孫さんが尋ねれば、「そうそう、この曲が流れるとね…」と、当時の思い出話に花が咲くかもしれません。音楽には、言葉だけでは引き出せない記憶の扉を開いてくれる不思議な力があります。ただ曲名を聞くだけでなく、実際にその場で一緒に聴くことで、思い出話とともに「あの頃」の空気をそのまま共有できる。それがデジタルならではの親孝行ではないでしょうか。

学びやゲームで「共通の話題」を作る

スマホは、ただ連絡を取り合うだけの道具ではありません。同じアプリを使って一緒に楽しむことで、自然と「共通の話題」が生まれます。

世界中で人気の語学学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」には、最大6名まで参加できるファミリープランがあります。これを使えば、お互いの学習状況がリアルタイムでわかり、「今日はここまで進んだよ!」という報告もスムーズに。iPhoneとAndroidどちらのスマホでもつながることができ、毎週ペアで課題に挑む「フレンズクエスト」のような協力要素も、会話を弾ませる良いスパイスになります。

脳トレや将棋などのゲームアプリで一緒に遊ぶのも、離れた親子にはおすすめの習慣です。オンライン対戦ができるアプリなら、「次は負けないよ!」といった他愛ないやりとりが、日常のビデオ通話やメールよりも気負わない、新しい親子の会話の形になっていくはずです。

おわりに ―スマートフォンが届けてくれる「気にかけているよ」の気持ち

スマートフォンを使った親孝行は、暮らしを劇的に便利にすることが目的ではありません。写真を共有すること、歩数を褒めること、思い出の曲を一緒に聴くこと。どれも日常のほんの小さなことです。けれど、その小さなことの向こう側には、「お父さん、お母さんのことを気にかけていますよ」という、言葉にしなくても伝わる気持ちがあります。

一緒にスマホを触りながら笑い合う時間。共有アルバムに届いた一枚を一緒に眺める時間。懐かしい曲を聴きながら昔話に花を咲かせる時間。対戦ゲームで「次は負けないよ」と笑い合う時間。そのひとつひとつが、親御さんにとっては何よりも嬉しい親孝行なのだと思います。 無理をする必要はありません。できることから、できる範囲で。スマートフォンという小さな窓を通じて、親御さんとの距離がほんの少し近くなる。そんなやさしいデジタル親孝行を、今日から少しずつ始めてみませんか。


※動画や音楽の配信サービスはデータ通信量が大きくなりがちです。親御さんの契約プランやWi-Fi環境を確認し、大容量のデータはWi-Fi接続時にダウンロードしておくと安心です。こうしたちょっとした気配りも、立派な親孝行のひとつです。

※スマートフォン、各種アプリ/サービスの情報は、執筆時のものです。

取材/文 戸田敏治

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