「供養」という言葉を聞いて、あなたがイメージするのはどんな行動でしょうか。たとえば、法事を執り行うこと。あるいは、お盆にお墓参りにいったり、仏壇にお線香を供えたりすること。もちろん、それらは立派な供養です。ですが、より故人の方それぞれにあった、多様で自由な供養の形があっても良いはず。大切な人に喜んでもらう供養の在り方を見つけてもらうヒントとして、このシリーズでは、さまざまな「供養のアイデア」をご紹介していきます。
遺品整理で大量に出てきて困るのが、両親が着ていた洋服。捨ててしまうのは簡単ですが、中には両親の形見として受け継ぐ方も少なくないようです。52歳の時に、77歳のお母様を亡くされた猪野さん(仮名)。お母様のクローゼットを整理してみると、最近の服だけでなく、お母様が昔に着られていた洋服も沢山でてきました。中には、お母様がご自身で仕立てられた喪服もあり、それを着て猪野さんは四十九日に臨みました。そして、集まった方々にお母様が若い頃から洋服の仕立てが得意だったこと、自分の服もよく作ってくれたことなどのエピソードを、着ている喪服の話と絡めて披露されたそうです。その後も、お母様の洋服を受け継ぎ、その時々の自分の年齢に合わせて似合うものを着ている狩野さん。「形見の服に袖を通す度に、母の匂いがして、今でも近くで見守ってくれているように感じられるんです」と言う彼女にとって、お母様の洋服は、途切れることのない絆をつなぐアイテムとなっています。いつか自分の娘にも受け継いでいきたいと、小さなほつれなどを丁寧に繕いながら、狩野さんはお母さんの洋服を大切に着続けています。
さて、猪野さんのように、お母様の服がそのまま着られたという場合は問題ありませんが、そう上手くいくとは限りません。袖や裾が短いだけであれば仕立て屋さんで直してもらうこともできますが、サイズがまったく合わない、デザインが好みではないとなると、そのまま使うのは難しくなります。そんな時には、リメイクに挑戦してみてはいかがでしょうか。もとの生地を活かしつつ、今どきのデザインに作り変えたりなど、洋服として新たな命を吹き込んであげることはもちろん、トートバックや小物入れにしてみるといった別の物にリメイクする方法もあります。インターネットで検索すると、テディベアの型紙なども多く公開されているので、古いスーツやコートを、かわいい人形にしてみるのも良いかもしれません。
服を着る度、アイテムを使う度、人形を見る度に両親のことを思い出す。故人の方の面影を、いつまでも身近に感じることのできる供養のアイデアです。
ということで、「みんなの供養のアイデア」シリーズ1回目は、大切なお洋服を受け継ぐというアイデアでした。以降もお楽しみに!