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今できる親孝行2024.01.24書店員に聞く親子の関係を考えるきっかけになる5冊

親子の関係は人生で最も大切なもののひとつです。どれも同じように見えて、それぞれに形が違います。しかも、私たちが成長するにつれ、親子の関係も変わっていきます。特に、高齢の親との関係では、これまでにはなかった新しい問題が次々と生じることもあるかと思います。親が高齢になった今が、あらためて「親子の関係」について考える時期なのでしょうか。

今回は「親子の関係を考えるきっかけになる本」をテーマに、三省堂書店池袋本店副本店長の杉山さんにお薦めの本を5冊選んでいただきました。本の形態は小説・エッセイ・実用・ノンフィクションと幅広く、内容も読後に自分自身を省みてしまうような深い問いを投げかける作品から、心がほっこりするハートフルな作品まで。ひとつの系統に偏ることなく選書してくださいました。杉山さんのコメントとともに紹介いたします。

1冊目:『健康以下、介護未満 親のトリセツ』カータン(KADOKAWA)

元CA(客室乗務員)のカリスマ主婦ブロガー、カータンさんが描く、コミックエッセイブログ「あたし・主婦の頭の中」をまとめた書籍です。高齢になった両親を中心に、実家でのカータンさんの奮闘を描いています。

自身が年を重ねるにつれて、自身が“子”の立場として両親の老後について悩みが深くなることも多いと思います。カータンさんがご両親と向き合う姿に、爆笑したり、共感したり、ときにほろりときたりと、楽しく読めて勉強にもなるコミックエッセイとなっています。

2冊目:『神様たちの遊ぶ庭』宮下奈都(光文社文庫)

『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞した宮下奈都さんが、福井から北海道のトムラウシに家族とともに引っ越し、1年間暮らした日々を日記形式で綴ったエッセイです。

北海道の奥地での生活は、これまででは信じられないようなことばかり起きます。そんな宮下家が大自然の中で地域の人々と交流しながら過ごしている姿には、宮下さんの筆致も相まってほっこりしてしまいます。とくに、3人の子供達がトムラウシで過ごす日々が愛おしく、温かい。今の世では常に家族が一緒に過ごすってことはきっと少ないけれど、こんな親子関係を築けたら良いなと思う素敵な作品となっています。

3冊目:『10代の子をもつ親が知っておきたいこと』水島広子(紀伊国屋書店)

「対人関係療法」の日本における第一人者・水島広子さんが、精神科医として実際に診療をした経験をもとに、心が揺れ動きやすい思春期の子供との向き合い方についてまとめた書籍です。子供のためにと思って行うことが子供に伝わらないことも多く、また、子供の行動が理解できずに戸惑ってしまうということも多いかと思います。そんな親子の関係性に悩む方に良いヒントを与えてくれる書籍となっています。

4冊目:『母という呪縛 娘という牢獄』齊藤彩(講談社)

著者である齊藤彩さんが、2018年に発生した滋賀医科大学生母親殺害事件の犯人の娘へ取材を敢行。獄中にいる彼女と交わした膨大な往復書簡をもとに綴ったノンフィクションです。

親は子供に「幸せになって欲しい」「大人になったとき苦労をしないで欲しい」と願い、教育に力を入れることは多いと思います。しかし子供は「親の期待に応えたい」思うあまり、自分の気持ちを押し殺してしまいます。過剰な期待や、抑圧された感情がこの凄惨な事件を引き起こすー。殺人事件に至るほどの家庭はほとんどないと思いますが、他人事ではない部分もあるかもしれません。親子の関係について一度立ち止まって見つめ直すきっかけになる書籍だと思います。

5冊目:『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ(文春文庫)

実母とは死別、実父とは海外転勤を機に別れ、主人公は継母との生活を選びます。時は巡り高校生になった主人公は3人目の父親とふたりで暮らします。大変な人生なのに「困った。全然不幸ではないのだ」から始まる物語です。

もし近くに同じような子供がいたら“不幸”で可哀そうな子供と思ってしまいそうですが、血縁に関係なく、大きな愛に包まれて生きてきた主人公からは“不幸”を感じることはありません。一般的な家庭環境でないことは、“大変”なことも多いかと思います。でも、それは“不幸”と同義ではないと、親子とは、家族とは、幸せとは、血縁がなければ築けないものではないと思わせてくれます。様々な親子の姿があっていい、愛に包まれた「バトン」をつないでいきたいと心揺さぶられる作品です。石原さとみさん主演で映画化もされておりますので、活字が苦手な方はぜひ映像でご覧いただければ幸いです。

老いた親を持つ世代は、子を持つ世代でもあります。「5冊の中から1冊」ではなく、お時間が許す
限り幅広く手にとっていただき、親としての思い、子としての思いの両面から「親子の関係」につ
いて想いを巡らせていただければ、大変嬉しく思います。
答えがないからこそ、これらの本をきっかけとして広い視野を持ち、老いた親へ柔軟に向き合って
行きたいと感じた5冊だと思いました。

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