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今できる親孝行2026.04.06好きな服で、笑顔で、大切な人のそばで。遺影写真撮影会が届けた晴れやかな時間

お気に入りの服に袖を通し、カメラの前で自然な笑顔を見せる参加者の方々。ここが「遺影写真撮影会」の会場だと聞いたら、少し驚かれるかもしれません。撮影を終えた方々からは、「思っていたのと全然違った」「楽しかった」という声が、晴れやかな表情とともに聞こえてきます。2026年3月15日(日)、はびきの中央霊園で開催された遺影写真撮影会を取材し、参加された方々のお話を伺いました。

「パチパチッと撮って終わり」だと思っていたのに

最初にお話を伺ったのは、ご夫婦で参加されたAさんご夫妻です。霊園から届いた撮影会の案内を見つけた奥さまが、その日のうちに申し込みました。ご主人もかねてから遺影の必要性を感じていたこともあり、撮影への迷いはなかったといいます。きちんとした写真を撮るのは20年以上ぶり。手元にあるのは運転免許のスピード写真くらいで、ご夫婦にとって、写真撮影そのものが久しぶりの体験となったそうです。

撮影にあたり、最も悩んだのは服装だったといいます。ご主人は当初ブレザーを着る予定でしたが、せっかくカメラマンに撮ってもらえるなら大好きなアーティストである「ブライアン・アダムス」と写りたいと思い、彼のロゴ入りパーカーを選びました。これは当日の朝に決断したそうです。「ブライアン・アダムス」は、車の中でも必ず聴いているアーティストなので、お子さんもお孫さんも「おじいちゃんらしいと思ってくれるはずだ」と微笑んでおられました。奥さまも、普段から着ているお気に入りのシャツを選びました。「子どもたちが『おかあさん、いつも着ていたよね』と懐かしんでくれるといいな」と楽しそうに笑っておられました。

撮影が始まると、お二人の予想は良い意味で裏切られたようです。「スピード写真のようにパチパチッと撮って終わりだろう」と予想していたところ、カメラマンは自分たちの話を聞きながら、じっくりと撮影してくれたそうです。構えたポーズではなく、会話の流れのなかで自然な表情を引き出すスタイルに、とてもリラックスできたとお二人は口を揃えます。

さらに嬉しい驚きだったのが、最後に撮ったご夫婦のツーショット写真でした。二人でも撮るとは聞いていなかったそうで、ご主人も奥さまも「ちゃんと二人で写真を撮ったのは結婚式以来かもしれない」と声を弾ませていました。

これから参加を考えている方へのアドバイスを伺うと、奥さまが強調されたのは「服装を気にしなくていい」ということでした。スーツやブレザーでなくても大丈夫で、好きなものを着てリラックスして臨めるのがこの撮影会の良さだといいます。ご主人もうなずきながら、「好きなアーティストのパーカーで撮れてよかった」と一言。その表情がすべてを物語っていました。

「一応撮っておこうか」から始まった、兄弟の小さな再会

もう一組は、75歳のお姉さまと73歳の弟さんという、ご姉弟で参加されたBさん家族です。こちらにお墓を持つ弟さんのもとに届いた撮影会の案内がきっかけでした。

弟さんに参加の動機を伺うと、「遺影にちょうどいい写真があるかどうかわからないから、一応撮っておいてもらおうかなと思って」と率直な答えが返ってきました。お姉さまのほうは、1人での撮影であれば気が引けたものの、弟さんと2人で撮影可能と聞いたので「それなら行ってみよう」と参加を決めたそうです。

本日の服装についてお姉さまに伺うと、「やっぱり歳をとると自分が地味になっていくでしょう。だから、いつもよりちょっと明るい色にしようかなと思って」と、好きな色の服を選んだことを教えてくださいました。特別に何か準備をしたわけではなく、日頃のお参りの延長のような気持ちで来たとのことです。

撮影の感想をお姉さまに伺うと、「カメラマンさんが上手に緊張をほぐしてくれて。撮られ慣れていない、一般の人の気持ちをちゃんとわかってくれるんですね。やっぱりプロは違いますね」と話してくださいました。弟さんも「もう全然違います」と同意されていました。

お二人にとって、兄弟で写真を撮ること自体が久しぶりだったようです。最後に一緒に撮った記憶は、子どもの頃にまで遡るとのこと。実は、もう一人妹さんがいらっしゃるとのことで、撮影後には「3人で来ればよかったな」という声も聞かれました。

また、弟さんはこちらのお墓に頻繁にお参りに来ているそうですが、お姉さまと一緒にお参りするのは久しぶり。「今日はついでやからね」とお姉さまは照れくさそうに笑っておられましたが、撮影会を口実に、兄弟揃っての久々のお墓参りが叶ったことを嬉しく思われているようでした。

「この場所で撮る遺影には、意味がある」

遺影撮影を担当されたカメラマンの方にもお話を伺うことができました。「この撮影会ならでは」の工夫があるのか尋ねると、撮影中には必ず、お墓に眠っている方との思い出を語ってもらうのだと教えてくださいました。故人との思い出を言葉にするうちに、緊張していた表情がふっとやわらいでいくそうです。「やっぱり気持ちがほろっとなるんですよね。そうすると、この場所でご自身の遺影を撮る意味が自然と出てくるんです」。霊園には、参加者がこれから一緒に眠る大切な方がすでにいらっしゃいます。その方のそばで遺影を撮ることは、「元気にしていますよ、いずれまたそちらでお会いしましょうね」という、故人への報告のような意味を持つのかもしれません。今の自分の元気な姿を見せる温かさと、いずれ一緒になるという穏やかな覚悟。その両方が、この場所で撮る遺影には込められているように感じました。

遺影撮影会が生まれた背景について

この撮影会を企画された担当者の方にもお話を伺いました。企画のきっかけは、人が亡くなった後のご家族の慌ただしさにあったといいます。葬儀の準備に追われるなかで遺影をどうするかと悩むご家族は少なくなく、事前にご本人が納得できる写真を用意しておければ、その負担を軽くできるのではないかと考えたそうです。はびきの中央霊園ではこの撮影会を年に1回程度開催しており、今回で5回目を迎えました。

「遺影撮影」というだけでは参加へのハードルが高くなることも想定し、家族写真やペットとの撮影も歓迎するかたちにしています。ご家族と一緒に参加できるイベントにすることで、撮影のついでにお墓参りもでき、それが供養のきっかけにもつながればという思いがあるそうです。今回は14組もの方が参加され、これまでのなかでも多い回となりました。

遺影は必ずしも亡くなった時の年齢に近い写真でなくてよいのだそうです。「大切なのは、ご自分が気に入った一枚を持っておくこと。それだけでご本人もご家族も安心できるのではないでしょうか」と、担当者の方は話してくださいました。

「今の自分」を写真に残すということ

取材を通じて感じたのは、参加された方々がそれぞれ、事前に抱いていた遺影撮影のイメージと、実際の体験との間にある良い意味でのギャップに驚き、喜んでいらっしゃったということです。スピード写真のように淡々と撮られるのかと思っていたら、カメラマンの方と会話を楽しみながらリラックスして撮影できた。かしこまった服装でなければと思っていたら、好きな服で自分らしい一枚を残せた。ご夫婦やご姉弟で参加したことで、思いがけず久しぶりの記念写真も撮れた。

「まだ早い」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、元気な今だからこそ残せる最高の一枚があるはずです。すぐそばでお墓に眠っている大切な家族に見守られながら、自分らしい「今」を写真に残す。遺影写真撮影会は、そんな穏やかで前向きな時間を届けてくれる催しでした。

イベント概要

名称:遺影写真撮影会
開催日:2026年3月15日(日)
会場:はびきの中央霊園
参加費:無料(墓地所有者およびそのご紹介者)
お渡しする撮影内容:1人につき笑顔の写真・落ち着いた表情の写真の2枚。ご希望により家族写真も可能
お渡し:2L版プリントおよびデータ

取材/文・撮影 戸田敏治

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