お盆が近づくと、お墓参りを計画される方も多いのではないでしょうか。お参りの手順や作法も気になりますが、特に迷いやすいのが、お供え物やお花に関するマナーです。「これは供えていいの?」「持ち帰るべき?」「菊以外のお花でもいいの?」と、いざ準備を始めると疑問が次々と浮かんでくるものです。
今回は、そんなお供え物やお花にまつわる疑問をQ&A形式でまとめました。お盆のお墓参りの前に、目を通していただければ幸いです。
※お参りの日程や時間帯、お作法やマナーについては「心を込めたお参りのために─意外と聞けないお墓参りの疑問 」をご覧ください。
※本記事の内容は、一般的なお墓参りの慣習や考え方をもとにまとめたものです(加登調べ)。宗派・地域・ご家庭の考え方、また霊園や寺院の規則によって異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
まずは、お供え物に関する基本的な疑問から見ていきましょう。

Q1. お供え物でお供えしてはいけないものはありますか?
A1. 仏教では、にら・らっきょう・ねぎ・にんにく・はじかみの五つを「五辛(ごしん)」と呼び、食べることを禁じていました。その名残から、これらは避けた方がよいとされています。また、肉や魚も「殺生」につながるとして避けるのが一般的です。
とはいえ、地域や宗派によって考え方は異なります。迷われた際は、お付き合いのあるお寺様にお尋ねになるのがよろしいかと思います。
Q2. お供え物を供えるタイミングはいつですか?
A2. まずお墓のお掃除をしてからお供え物を供え、その後にお線香に火をつけるという順番が一般的とされています。きれいに整えたお墓にお供えすることで、より丁寧なお参りになります。
Q3. お供え物の適量はありますか?
A3. 量について厳密な決まりはありません。お参り後は「お下がり」として持ち帰るのが一般的ですので、カバンなどに入れて持ち帰れる程度の量がひとつの目安になるかと思います。
Q4. 果物などはむいて供えた方がよいですか?
A4. むかずにそのまま供えるのがよろしいかと思います。お供え物はお参り後に持ち帰ったり、お経をあげていただいたご住職にお渡ししたりすることもあります。衛生面を考えても、皮をむかずにお供えする方が安心です。
Q5. お供え物を持ち帰るタイミングはいつですか?
A5. お墓参りがひと通り終わり、お墓を去る直前で問題ありません。お供え物を置きっぱなしにすると、鳥や動物に荒らされてお墓が汚れてしまうおそれがありますので、忘れずに持ち帰るようにしましょう。
Q6. 食べ物以外もお供えしてよいですか?
A6. 厳密には「お供え」とは異なるかもしれませんが、故人への手紙やメッセージ、お孫さんやひ孫さんが描いた絵、故人が好きだった本や雑誌などを持参される方もいらっしゃいます。故人を思う気持ちが込められていれば、きっと喜んでくださるのではないでしょうか。
「お父さんはお酒が好きだったから、お墓にもお供えしたい」。そんなお気持ちを持つ方も多いのではないでしょうか。飲み物のお供えに関する疑問をまとめました。
Q7. お酒が好きだった方にお酒をお供えしてもよいですか?
A7. お酒を供える方はたくさんいらっしゃいます。ただし、宗教的に、あるいは霊園の規則によってお酒がNGとされている場合もありますので、事前にお付き合いのあるお寺様や霊園にご確認いただくとよろしいかと思います。
なお、瓶は強風で倒れて割れるおそれがありますし、缶は長期間放置すると底がさびて墓石に跡が残ることもあります。お参り後は忘れずに持ち帰りましょう。
Q8. お酒やジュースなどの正しいお供えの仕方はありますか?
A8. お墓に直接かけたり、水鉢と呼ばれるお墓のくぼみに注いだりすることは、あまりお勧めいたしません。石がさびたり変色したりする原因になることがあります。
瓶や缶、ペットボトルのままでも問題ありませんが、仏様に香りを楽しんでいただけるよう、蓋は開けてお供えするのがよいとされています。コップや湯呑みなどに注いでからお供えすると、なおよいでしょう。
お墓参りのお花といえば菊のイメージが強いかもしれません。実際には菊以外のお花を選ぶ方も増えています。お花に関するさまざまな疑問をまとめました。

Q9. お墓参りのお花は、菊でないといけませんか?
A9. 「長持ちし、色が落ち着いていて、トゲや毒がないもの」が原則とされており、その代表が菊です。ただし、最近では原則にこだわらず、故人が好きだったお花を供える方も増えています。母の日の前後にはカーネーションが供えられているのもよく見かけます。
Q10. あまり派手なお花はいけませんか?NGのお花はありますか?
A10. 派手だからいけないということはありません。ただし、仏教的にはトゲのある花(痛みや死を連想させる)、毒のある花(仏様に毒を与えることになる)は避けた方がよいとされています。椿の花も、花ごと落ちるさまが死を連想させるとして昔から避けられてきました。
また、ツルが伸びる花は隣のお墓に絡みつくおそれがありますので、避けた方がよいでしょう。
Q11. 暑い日などは造花でもよいですか?
A11. 霊園やお寺様によっては造花をお断りしているところもあるようですが、おおむね問題ないとされています。
ただ、お花をお供えすることには、お参りする方に向けた仏様の慈悲を表すという意味もあるとされています。
供養する側が生命のみずみずしさや香りを感じ、心を清められるのは、やはり生花ならではかもしれません。また、お線香と同じようにお花の香りも仏様の食事と考える宗派もあり、その場合は生花が望ましいでしょう。
Q12. 花の本数や色に決まりはありますか?
A12. 慶事には奇数が縁起がよいとされていることから、本数は奇数が望ましいとされています。とはいえ1本では寂しいので、3本、5本、7本などが一般的です。色には特に決まりはありませんが、黒い花をNGとする地域もあるようです。
Q13. すでに他の方がお花を供えていた場合、どうすればよいですか?
A13. そのお花がまだきれいで、花立にスペースがあるようであれば、ご自身のお花を追加で供えるのがよろしいかと思います。スペースがなければ、そのまま持ち帰りましょう。先に供えられていたお花が枯れている場合は処分し、代わりにご自身のお花を供えてください。
Q14. 前の方のお花が枯れていたら、片付けてもよいですか?
A14. はい、問題ありません。お墓をきれいに保つことは、ご先祖様や故人に対する大切な供養のひとつです。
Q15. 花瓶がない場合はどうすればよいですか?
A15. バケツやペットボトルなどで代用したり、お墓に直接置いたりする方法もあります。ただし、そのままにしてはいけませんので、お参りが終わったら片付けて、お花は持ち帰るようにしましょう。
Q16. お花も持ち帰らないといけませんか?
A16. 花立にお供えしたお花はそのままで問題ありません。持ち帰るのは、花立にスペースがなく供えられなかった場合や、花瓶の代わりにバケツなどを使用した場合です。
お墓参りやお供えの作法には、地域や宗派、ご家庭ごとの違いがあります。本記事でご紹介した内容はあくまで一般的な目安としてお考えいただき、無理のない形で心を込めてお参りすることが何よりも大切です。
お供え物を選びながら故人の好みを思い返す時間、何を持っていこうかと思いを巡らせる時間。そうした準備のひとつひとつが、すでに供養の一部なのかもしれません。そして、お墓の前に立ち、手を合わせ、「会いに来ました」と語りかけるとき、お墓はご先祖様や故人と感謝を伝え合える、かけがえのない場所になります。
なお、暑い時期のお墓参りでは、熱中症にも十分ご注意ください。こまめな水分補給や日よけ対策を忘れずに、ご自身の体調を第一にお参りされることをお勧めいたします。
取材/文 戸田敏治